読解力の発達にはさまざまな説があるようで、それぞれ、少しずつ発達するという基本概念は同じなのですが、どこで区切りをつけて 『第一段階』 『第二段階』 とするかということになると、諸説あり年齢層も一定しないので、今回は私がこれなら分かりやすいかなと思うものを採用してお話ししたいと思います。
発達のマイルストーンとして書き始めますが、実際には3才位までは読むというよりも読解力をつけるためにその基礎を作っていくという事になります。
発達のマイルストーン
【幼児期 (1才まで)】
- 自分の聞いた音を真似し始める。
- 話しかけられると反応する。
- 絵や写真を見る。
- 本を持ってページをめくる。
- 物語などに反応し、声に出して物やキャラクターの名前を言ったり、絵本の絵を叩いて知らせようとする。
【1才から3才】
- 絵本の中の物が何だか理解し始める。質問をされたときに答えられる (例: ライオンはどれ?ライオンはどうやって吠えるの?など)。
- よく知っているものの名前を言える。
- 知っているものを指差し名前を言える。
- 本を読むふりをする。
- 紙にいたずら書きをする。
- 自分の知っている本のタイトルを覚え、表紙の絵などでその本と分かるようになる。
- 大きな本のページをめくることが出来る。
- お気に入りの本が出来、何回も読んでもらいたいとせがむ。
【3才】
- 自分で読みたい本を探すようになる。
- 朗読されている本を長い時間聴くことが出来るようになる。
- 好きな物語を繰り返して言えるようになる。
- アルファベットを暗唱できる。
- 色々な図形を真似して描ける。
- 朗読されている本と同じ動作や行動をする。
【4才】
- 自分の知っているサインやラベルを探すようになる。
- 自分なりのおかしな歌を作り始める。
- アルファベットが少し分かるようになり、いくつか書けるようになる (ゴールとしては12から15のアルファベットが書けるようになる)。
- 自分の名前を読み書きできる。
- アルファベットの音を聞いたとき、どの文字か理解するようになる。
- 自分の知っている文字を使い文章を書こうとする。
- 文章は上から下、左から右に読むということを理解し始める。
- 以前に読んでもらった物語を話すことが出来る。
- 知っているラベルやサインを理解する。
- 言葉遊びに参加できる。
【5才】
- 詩や韻文のようなものを作り始める。
- 話し言葉と書き言葉が一致するようになる。
- 数字、文字、単語がある程度書けるようになる。
- 知っている単語を分かるようになる。
- 物語の筋を予想できるようになる。
- 短い単語の中の音を理解できるようになる (例: Sit、Sunなど)。
- 単語の意味を理解し始め、他の文章にそれを使用できるようになる。
- 自分の考えを整理して話すことが出来るようになる。
- さらにそれを順序立てて話が出来るようになる。
- 物語を読んでもらう事を楽しみにする。
- 物を尋ねる時や表現をする時に描写的な言葉を使うようになる。
【6才から7才】
- 知っている物語を自分で読むことが出来、それを人に話すことが出来る。
- 知らない言葉を音で探り意味を理解しようとする。
- 絵や前後の文の関係で知らない言葉の意味を探る。
- 句読点や文頭の大文字の使用などを正しく使い始める。
- 音読中の自分の間違いを正す。
- 絵などで物語の包括的な推測が出来るようになる。
- きちんとした文章が少しずつ書けるようになる。
- 音読が楽に出来るようになる。
- 単語を見ることでどんな言葉か認識できる。
- 自分にとって重要なトピックを文章に出来る。
【7才から8才】
- もう少し長い物語を読めるようになる。
- 強調や抑揚をつけて音読できる。
- 文脈や挿絵などから知らない単語の意味を探り始める。
- 段落という概念が理解できるようになり、それを用いて書けるようになる。
- 句読点が正確に使える。
- 沢山の言葉を正しく綴ることができる。
- メッセージなどのノートを取れるようになる。
- 言葉探しゲームが出来るようになり楽しめる。
- 色々なところで聞いた新しい言葉を使い始める。
- 自分で物語を創造する。
【9才から13才】
- 色々なジャンルの物語を読めるようになる (例: 自伝、詩、小説など)。
- 科学の本など、特定な情報の本を読む。
- 物語、小説などの色々な部分 (時間、時代、問題、解決法) を理解する
- 楽しみで自分の好きな物語を書くことが出来る。
- 文の意味を分析するようになる。
読解力を発達させる要素とは
読解力を発達させるには「流暢さ(Fluency)」と「理解力(Comprehension)」が知識を吸収するとき重要な要素になります。
- 流暢さ(Fluency)
-
流暢さ (Fluency) は、読むという行為が自動的に行われるという事で、読者は大半のエネルギーを言葉の意味を探るために使うことなく (Decodingと言います)、言葉を見たときに無意識にその言葉を読める事を指します。このDecodingという行為は、印刷された言葉を無意識にフォニックス (Phonics) や他の技術を使って自然に発音できる能力です。この流暢さは、単語ひとつずつではなく、スムーズに意味のつながった読み方をします。流暢に読める読者というのは、ほとんどの単語や言葉を見た瞬間に理解し、一語一語ではなく、全体と意味を考えて読むことが出来ます。
流暢さと理解力は同じ物ではないのですが、しかし流暢さは理解力を養うために必要不可欠な段階になります。流暢に読むことができない読者 (Prefluent or Disfluent reader) は、内容ではなく言葉や単語の意味、読み方を探ることに使ってしまうので読む事に時間と努力を必要とする結果になります。
- 理解力(Comprehension)
-
理解力 (Comprehension) は、ただ単に単語や文章の意味を結びつける行為ではなく、文の中に書いてある意味に加え、想像力を働かせて作者の意図を汲み取ったり、物語の進行を予想したりなどをしていける能力です。特に高い理解力は高い認識力に発達していきます。
小学校高学年や中学生時に読み方の流暢さを身につけることで、以 下の3つの大切な読むための技能を得ることが出来ます。
- 年齢相応の人格形成が、小説の中での疑似体験によって培われる。
- 認識力の強化が複雑になっていく小説内での単語、文章、性格描写、構文などにより発達する。
- 社会性の違いを分かるにつれ文化の違いを理解できるようになる。
- 批判的な意識(Critical Consciousness)
- これは読書をするにあたり、内容を抽象的・分析的に考えていく事が出来る能力のことで、大体中学校時代に確立し始めて大人になるまで発達し続けるものです。
読解力発達のステージ
- ステージ1: 読むことを学ぶステージ (Learning to Read)
-
- このステージは、大体4才から5才くらいで文字を学ぶころに始まります。
- このステージは、子供が簡単な読み物が流暢に読みこなせるようになった時点で完了します。
- ほとんど子供がステージ1を小学校2年生くらいまでに完了します。
- 一部の子供はステージ1を1年生半ば、または3年生半ばに完了する事もあります。
- ステージ1の焦点は文字をいかに読むか、さらにこの文字の意味はどのような意味なのか、さらに読まれた時の音を聞いてどんな文字が当てはまるのかを探り、読むことの基礎を固めることになります。
- この時期年齢に適合したレベルの本を読むことは、流暢に本を読み進めるためにとても大事なことになります。
- 文字自体を自然に無理なく読めるようになったら、だんだんと内容を把握し焦点を置いていけるようになります。
- 子供に音読してあげることが、親にできるステージ1における最も大事なサポートです。
- ステージ2: 独自に読む技能の発達 (Developing Independent Reading Skill)
-
- ステージ2は、初級の読書技能を習得し、そのレベルの本が流暢に読むことが出来るようになったときに始まります。大部分の子が大体小学校2年生ころになります。
- ステージ2になると、子供たちの読み方は音読から黙読に移行します。
- ステージ2は、子供が小説を流暢に読めるようになった所で完了します。これは大体小学校3年生から4年生になります。
- 一部の子供は、早ければ2年生中に遅くとも5年生にはこのステージ2を完了することになります。
- ステージ2の焦点は、年齢相応の本を沢山読むことにあり、それも初級の本よりも、チャプター (章) のある本を読むのがいいでしょう。これらの本は文章も長くなり、単語も少し難易度を増します。
- 単語の韻も長くなります。3音以上の韻が初級の本では、1~3%なのに対して、このステージ2は5~8%くらいに増えます。
- ステージ3: 読書による知識の吸収 (Reading with Absorption)
-
- ステージ3は、子供たちが子供用の小説を流暢に読みこなせるようになったときから始まります。
- 大体小学校3年生から4年生くらいになります。
- ステージ3の焦点は、子供用の小説を読みこなす事と、小説自体を少しずつ難易度を上げ、そこから知識を蓄積することにあります。
- ステージ3がこれから先の読解力を伸ばしていく基礎となります。
- 子供が読書をするにあたり、ほかとの違いの認識と知識の吸収を念頭においていくことで、書き手の意思を汲み取れる技能を発達させていく事が出来ます。
- ステージ4: 批評的な読書 (Critical Reading)
-
- 子供たちが身体的、精神的、認識力の成長を見せるにつれて、読書にも新しい能力が現れてきます。それは批評的な意識 (Critical Consciousness) というものです。
- これは、文章に書かれていることを一歩下がって自らの経験と照らし合わせ、文章の内容を分析・抽出して考えながら読んでいくことです。
- この読み方を習得することで、本を読んだとき何が主題なのか、必要なものを抜き出して読んだり、適切なノートを取れるようになりますので、後々の勉強に必要不可欠な能力となります。
発達の遅れのサイン
- 3、4才で、童謡が覚えられない。同韻語を使った遊びが出来ない。
- 4才で、言われた指示や読んだ本から情報を得られない。
- 幼稚園で、標識、サイン、本で見た数字、文字をまったく書くことが出来ない。
- 5才で、一から二語の単語を使った単純な言葉遊びが出来ない (例: “あ” の付く動物を言ってくださいなど)。
- 5才、6才で、単語の一部分を変えると、違う言葉になるという概念が理解できない (例: Hat、Bat、Matなど)。
以上色々と書きましたが、これは諸説ある中でも、私がこれがわかりやすいと思ったものを選びました。 他にも発達のステージには出典によって多少の違いがあるため、皆さんの知っている説とは少し食い違う可能性があります。 御了承ください。
発達のステージや遅れのサインが気になりましたら、早期に専門家に相談してください。