姿勢反射 (Postural Reflex) とは
姿勢反射 (Postural Reflex) とは、自動的な動き (これを反射といいます) のことです。 この機能によって休んでいるときや動いているときに、体のバランス、または動きをスムーズに行えるように、さらには平衡感覚を維持することができます。 脳の発達により、原始反射を抑制してこの高度な姿勢反射 (Postural Reflex) が取って代わります。 つまり、もし原始反射が何かの原因で抑制が起こらずにいると、この姿勢反射 (Postural Reflex) への発達が遅れてしまい、脳の発達も遅れることになります。 姿勢反射 (Postural Reflex) が遅れている、または欠損しているということは、脳の発達が未成熟というサインになります。
姿勢反射 (Postural Reflex) の種類と特徴
- 正向反射 (Righting Reflexes)
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1. 目と頭部正向反射 (Oculo Head Righting Reflex)
- 視覚による刺激で起こる反射です。
- 生2ヶ月から3ヶ月で始まり一生続きます。
- 視点を安定させるためのもので、体が動いても頭は安定した状態に保つことができます。
- 視覚による注意力を維持するためには不可欠な反射です。
- この反射が発達していないと焦点を合わせて物を見ることや、動いている物を追えなくなります。
- 文字を読んだり、書いたりする能力が低下する結果になります。
- 発達不全の場合、目で物を追う事がきちんと出来なくなり、時には吐き気を催す事もあります。
2. 迷路頭部正向反射 (Labyrinthine Headrighting Reflex)
- バランス感覚器によって起こる反射です。
- 生後2ヶ月から3ヶ月で始まり一生続きます。
- 体や頭を傾けたとき、首の筋肉が反応をし、頭つまり視点を一定に保とうとする反射です。
- 平衡感覚に不可欠のものです。
3. ランダウ反射 (Landau Reflex)
- 生後3ヶ月から10ヶ月くらいに起こり、生後36ヶ月で抑制されます。
- 赤ちゃんを腹ばいにしたときに体を反り返らせる反射です。
- 緊張性迷路反射 (Tonic Labyrinthine Reflex) を抑制する反射で、筋肉を強くし、視覚と平衡感覚の同調をさせるために発達していきます。
4. 両生類反射 (Amphibian Reflex)
- 生後4ヶ月から6ヶ月に起こります。
- 最初はうつ伏せから起こり、骨盤を上げることで自動的に股関節と膝を曲げる行為をします。
- 欠損している場合は、不対象強直性頚部反射 (Asymmetrical Tonic Neck Reflex) の持続が考えられます。
- これにより次の段階であるハイハイの準備にかかります。
- ハイハイ、歩行、走るという機能の発達にとても大事な反射です。
5. 転回反射 (Segmental Rolling Reflex)
- 生後6ヶ月くらいから始まります。
- 仰向けからうつ伏せが生後6ヶ月、うつ伏せから仰向けが8ヶ月から10ヶ月の間に起こります。
- 頭を回した方向に体が転回します。
- 平衡反応 (Equibrium Reaction)
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前出の正向反射の発達は、姿勢のコントロールの一部分であり、まずこの正向反射を確立した後に生後9ヵ月ごろから平衡反応が発達し始めます。 この反応は、内耳が重力に反応し重心を確立してバランスを取ります。 平衡反応は、主に体の自動的な防御機能の一つで、急激な姿勢の変化やバランスが崩されたときに、いち早く反応して転んだりする事を防ぐ役割をします。
1. パラシュート反射 (mainchute Reflex)
- 防御反応です。
- 生後5ヵ月から6ヵ月ごろに始まります。
- 子供が転びそうになったとき腕を伸ばして防ごうとするものです。
2. 支持反射 (Propping Reflex)
- 子供が安定して座ることを助けるものです。
- 前方支持反射は生後4ヶ月から5ヶ月くらいに始まります。
- 体が前に倒れたとき腕を伸ばして倒れないようにします。
- 横支持反射は6ヶ月から7ヶ月頃に始まり、横に体が傾い たとき腕を伸ばして支えます。
- 最後に後方支持反射が発達します。
- バランスを崩しても転ばないで座っていられるようになります。
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脳の成長 (つまりはどのような原始反射がいつ始まりいつ終わるか、そして姿勢反射に切り替わるか)には3段階あります。 発達に従い、最初は脊髄 (Spinal nerve)、脳幹 (Brain Stem) によって反射は起こり、次は間脳 (Mesencephalon) そして大脳 (Cerebral Cortex) と、脳の発達に従い反射の起こる場所も違ってきます。
1. 無歩行期 (Apedal)
脊髄、脳幹から起こる原始的な反射で、運動機能を発達させていく期間です。 運動機能はうつ伏せ、仰向けで行われます。
- モロ反射
- 緊張性迷路反射 (Tonic Labyrinthine Reflex)
- 不対象強直性頚部反射 (Asymmetrical Tonic Neck Reflex)
- 哺乳反射、吸引反射 (Rooting and Suck Reflex)
- 手掌把握反射 (Palmar Grasping Reflex)
- スパイナルガラント反射 (Galant Reflex)
2. 4足歩行期 (Quadruped)
間脳支配の反射により運動機能発達が起こります。
- 迷路頭部正向反射 (Labyrinthine Headrighting Reflex)
- 両生類反射 (Amphibian Reflex)
- ランダウ反射 (Landau Reflex)
- 転回反射 (Segmental Rolling Reflex)
- パラシュート反射 (mainchute Reflex)
- 対象強直頚部反射 (Symmetrical Tonic Neck Reflex)
- バビンスキー反射 (Babinski Reflex)
3. 2足歩行期 (Bipedal)
大脳レベルの反射により運動機能が発達します。
- 目と頭部正向反射 (Oculo Head Righting Reflex)
- ホッピング反応 (Hopping Reaction)
- プレーシング反応 (Placing Reaction)
もし正向反射や平衡反応がきちんと発達しなかった時、脳は体の防御のためにこれらの反射が使えないので後退した反射を使用するようになってしまいます。 つまり原始反射に戻ってしまうのです。 これにより当然脳の発達は妨げられてしまうことになります。
原始反射の持続は規範的な学習能力の発達の妨げになります。 この基本学習能力とは 「読解力」 「見て物を真似ること」 「文字を書く」 などです。 また姿勢反射は 「姿勢のコントロール」 「理解力」 「学業での成功を目のコントロールを通じて結ぶブリッジの役割」 を果たし、脳の発達を促進します。
- 姿勢反射がきちんと発達していない場合、どのような症状を起こすのか
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- 物事や環境に適応できない。
- 問題解決に既存の概念を応用できない。
- 相互関係が良く分からない。
- 並行的な考え方ができない。
- 段階的な考え方ができない。 たくさんの情報を処理できない。
など、高等教育には不可欠な資質が欠けてしまうことになります。