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心のケアと癒しに役立つ臨床心理のここだけのお話

Updated on 2022/11/ 28

Vol.15 : トラウマについて

トラウマ(心的外傷)は、分かりやすく言うと「心が受けた傷」のことです。外傷と同じように心が受けた傷にも種類があり、その強さと頻度によって2つに大別されます。

シングルトラウマ

普段の生活では予想もしないような衝撃的な事に遭遇した際に起こります。例えば地震や津波などの自然災害や、ケガ人や死者が出るような大きな火事、交通事故など、まさに生死を分けるような出来事などがこれにあたります。人間の脳はこのような経験を遭遇すると、一瞬で情報過多になり処理ができず思考が停止した状態(フリーズ)になってしまいます。交通事故が起きた直後などにボーっとしたり、痛みを感じなかったりするのはそのせいで、脳がショートすることで心身を守っているのです。

コンプレックストラウマ

シングルトラウマに比べて生死を脅かすようなものではありませんが、同じことを何回も経験するとトラウマになってしまいます。仕事のプレゼン中に失敗した、友達にイジメられた、夫から殴られた、親から虐待を受けた、料理中に包丁で指を切った、自転車で何度も転んだ、交通事故に遭いそうになったなど、内容はさまざまですが頻度が高ければ高いほど根深いトラウマになってしまいます。人によっては、怖い映画を観たり失恋したりなどもトラウマになります。

トラウマのメカニズム

トラウマの恐ろしいところは、シングルまたはコンプレックスに関わらず、脳にその時の映像や体験などが刷り込まれてしまい、日常生活の中で瞬間的に再体験してしまうことです。

シングルコンプレックスの場合、その瞬間は脳がショートして心身を守ってくれても、次に同じような経験をすると、脳は以前と同じようなことが起きると思ってしまいます。交通事故であれば車のブレーキ音を聞いただけで脳は反応してしまいます。そして本能的にその出来事や状況を避けようとするので、車を運転することができない、事故現場に行けなくなるなど生活に支障をきたすレベルになることもあります。

コンプレックストラウマも同様です。イジメによるトラウマなら、人とコミュニケーションを取ることが怖くなり、学校や会社に行けなくなったり社会から断絶して引きこもりになったりすることもあり大きな問題となります。

また、トラウマが原因で強迫性障害になることもあります。交通事故によるトラウマなら安全確認をくどいほど行う“儀式”を行い、これが終わらないと安心できなくなってしまうのです。

次回のコラムでは、トラウマの治療についてご説明します。

Updated on 2022/11/ 28

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インターナショナル ライフサイクル ファミリーセラピーInternational Lifecycle Family Therapy Inc.

CA州心理士免許(LMFT)と博士号を持つ経験豊かな2人のセラピストによる心理カウンセリングオフィス。多くの方々のより良い心の健康を目指し、個人、カップル、家族の心理セラピー/カウンセリングを日本語および英語で提供している。仁科盛次郎(心理療法士、LMFT#50945)および菱谷有希子(心理療法士、LMFT#53262)はCA州公認のマリッジファミリーセラピストで、専門は家族・カップル間のコミュニケーション、異文化や多文化における問題、思春期における心理やアイデンティティ問題、薬物依存治療など。多種多様な家族療法を取り入れたアプローチや、物の見方を変え解決方法の発見へと導くアプローチ、催眠療法などの潜在意識セラピーを提供。また、両者ともに移民難民、性犯罪にかかわる青少年更生、薬物リハビリテーション施設での経験を持つ。大学院講師としての活動及び後輩育成にも精力的に取り組んでいる。Youtube「カリフォルニアから心の癒しチャンネル」にて心にまつわるビデオ公開中。

International Lifecycle Family Therapy Inc.

1101 South Winchester Blvd. Suite P-296 San Jose, CA 95128

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