心のケアと癒しに役立つ臨床心理のここだけのお話

心理カウンセリングやセラピーをしている中で、心の悩み、成長、癒しに関するいろんなトピックが出てきます。このコラムの中でその事をより多くの方にシェアして、皆様のお役に立てれればと思っております。

2022年 5月 25日更新

第9回 : 心を掘り下げ新しい道筋を作る「根治療法」

「対処療法」と「根治療法」

「自分って変われるの?」これは、メンタルヘルスの治療において、長年セラピストとして多くの患者さんを診察させていただいた立場から言っても、非常に重要なキーワードです。心に悩みを抱えた患者さんは、苦しい今の状態から抜け出して変わりたい(良い状態になりたい)と考えて精神科医やセラピストのもとを訪れます。

セラピーには「対処療法」と「根治療法」の2種類があります。例えば、いつも不安につきまとわれ、食欲が無くなりおまけに眠れないという患者さんが来院した場合、通常セラピストは検査などを行って診断し、患者さんに病状を説明して、不安に対する考え方を変えてみようとか、必要に応じて不眠などの症状を緩和する処方箋をわたすこともあります。これが今抱えている問題に対して治療すること、つまり「対処療法」です。もちろんこれで治療できる患者さんもいます。しかし、人によってはセラピーが終わったその日は晴れやかな気持ちで帰路につくことができるのですが、すぐ元の状態に戻り再びセラピーへ、と繰り返しになってしまい根本的な治療にはなっていないことがあるのです。

一方「根治療法」は、不安を抱いてしまうのはなぜか、いつどこで出るようになったのか、どんな形で出てくるのかなど、不安の根っこを深く掘り下げて見つけ出し向き合います。具体的には「セラピー」「カウンセリング」「コーチング」の三分野で進めていきます。

「セラピー」とは治療という意味ですが、基本的にヒーリング(癒し)を目的としています。そして「カウンセリング」と「コーチング」はモチベーションを上げるものです。ヒーリングかそれともモチベーションのどちらが必要なのかは、セラピストと患者さんが話し合いながら決めていきます。患者さんが自分はモチベーションが必要だと思っていても、セラピストから見るとヒーリングが必要だという場合もあるため、認識のずれや希望などすり合わせていくのも重要なポイントです。ちなみに、メンタルヘルスの治療で行う「セラピー」や「カウンセリング」「コーチング」は、カリフォルニア州の場合、州の資格を持つセラピストが行うもので、インターネットなどで見かける一般的な“カウンセリング”や“コーチング”とは全く異なるものですので混同しないようにしましょう。

「根治療法」のカギを握る潜在意識

「根治療法」には潜在意識が深く関わってきます。人間の意識には顕在意識と潜在意識があり、そのほとんどを占めるのは潜在意識です。メンタルヘルスの「根治治療」において大切なことは、自分自身に対するネガティブな思い込みを癒すことです。しかし、これは顕在意識には一切現れず潜在意識の中にあります。文字通り深い意識の底に潜っているので、人は自分の意識の中にそんなネガティブな思い込みがあることすら気付きません。それが潜在意識の特徴なのですが、人の意識に想像できないほど大きなインパクトを与えます。特に、親との関係には非常に多大な影響があります。人は育てられた環境で親に愛されていなかったと感じてしまうと「私は十分じゃない。私は悪い子なんだ」という思い込みを潜在意識に刷り込んでしまうのです。刷り込まれたこの自責の念は、そのまま大人になっても潜在意識の中に蓄積され、何か問題を抱えた時に不安や落ち込みなどのネガティブな症状として出てきてしまうのです。

意識の奥深くにネガティブ爆弾を抱えている状態なのですから、いきなりポジティブに生きようと思っても方向転換をするのは難しくて当たり前です。たとえセラピストに会って話をしたり、周囲の人にアドバイスをもらったり、ポジティブ思考の本を読んだりセミナーなどを受けたりしても、それを受け取るのは顕在意識だけで潜在意識にはまったく届いていないからです。

この潜在意識を癒すために、セラピストはヒプノセラピー(催眠療法)を使うことが多いです。簡単に説明すると、意識のタイムマシンのようなものです。過去に戻りネガティブな思考を作った出来事を再体現するのです。目的は「あの時私はこう考えるしか(行動するしか)なかったけど、今なら違う考え方(行動)ができる」と自分に気付かせること。過去を再体現しそこでネガティブな思い込みを書き換える、つまり新たな道筋を付けていくのです。道筋が太くなればなるほど、ネガティブな道は細くなりいずれ消滅します。新しい脳の回路を作ることは、本当の意味で癒しとなります。これが根治療法なのです。人は過去を変えることはできませんが、そこで体験した感情は後からでも変えられるのです。自分に優しいメッセージを送ることで、人は心が癒されるのです。

上記の内容が、落ち込みや不安解決の糸口になれば幸いですが、つらいときは一人で苦しまずに、心理カウンセリングやセラピーを受けてみるとよいと思います。

2022年 5月 25日更新

皆さんのご意見、ご相談等ございましたら以下までご連絡ください。

info@internationallifecycle.com

Columnist's Profile

インターナショナル・ライフサイクル・コンサルタンツ(International Lifecycle Consultants)

CA州心理士免許(LMFT)と博士号を持つ経験豊かな2人のセラピストによる心理カウンセリングオフィス。多くの方々のより良い心の健康を目指し、個人、カップル、家族の心理セラピー/カウンセリングを日本語および英語で提供している。仁科盛次郎(心理療法士、LMFT#50945)および菱谷有希子(心理療法士、LMFT#53262)はCA州公認のマリッジファミリーセラピストで、専門は家族・カップル間のコミュニケーション、異文化や多文化における問題、思春期における心理やアイデンティティ問題、薬物依存治療など。多種多様な家族療法を取り入れたアプローチや、物の見方を変え解決方法の発見へと導くアプローチ、催眠療法などの潜在意識セラピーを提供。また、両者ともに移民難民、性犯罪にかかわる青少年更生、薬物リハビリテーション施設での経験を持つ。大学院講師としての活動及び後輩育成にも精力的に取り組んでいる。

International Lifecycle Consultants

1101 South Winchester Blvd. Suite G-174 San Jose, CA 95128
TEL:
408-800-5366
FAX:
408-380-4542
EMAIL:
info@internationallifecycle.com

次回のコラム

COMING SOON
  • 第10回 : 心の癒しにつながる脳と神経のお話
  • 第11回 : トラウマのお話
  • 第12回 : トラウマのお話 パート2 (ショックについて)