小児科臨床の四季

小児医業は、四季を通じ色々な病気に立ち会う。春は花粉によるアレルギー、そして秋から初冬にはインフルエンザ。子供達の病気を看るのは大変だが、それなりの楽しみがある。お母さま達の心の休みとなれば幸い。

2019年 9月 10日更新

第16回 : 腸は第二の脳

「腹が立つ」「腹を抱えて笑う」「片腹痛い」など、昔から日本語にはお腹に関する表現がたくさんあります。また、試験や就職面接前にお腹が痛くなったり、下痢を催したりすることがよくありますね。これらは、精神的な興奮が、自律神経系や副腎皮質ホルモンを通じて、肉体的な症状を起こしているしるしです。一方で、お腹の調子が悪いと気分がすぐれないこともよくあります。これらは、脳とお腹つまり腸が、お互いに影響を及ぼしあっていることを示唆しています。

腸、ことに大腸の中には、膨大な細菌が定住しており、そこに送られてきた部分的に消化された栄養物をさらに消化し、体内に吸収させる働きをしています。これらの細菌群を腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)と呼びます。この細菌叢は、大まかに、善玉群、悪玉群と日和見群の3つに分けられ、適当に影響しあって腸の機能を調整しているのです。腸の機能というより、腸内細菌叢の機能と言った方が良いかもしれません。

さて、腸内細菌叢の機能の中で、最も注目されている働きがあります。それは、腸壁に分布している自律神経神経、特に迷走神経を通じて脳に腸内の状況を伝達し刺激を与え、大脳の皮質や海馬(記憶・学習の中枢と呼ばれている所)などの脳神経系との造成に影響を及ぼすということです。

ストレスによって胃腸の調子を壊しやすい人たちは、腸内細菌叢のバランスが良くないことがしられています。また、ある精神的な疾患の中には、胃腸系の不全を訴える人が多いこともしられています。近年、細菌間の情報伝達に使われる分子のレセプターが、人由来のストレス関連ホルモンにも反応して、病原性大腸菌の増殖を促進することが判ってきました。

腸内細菌叢は、植物繊維(プレバイオチック)を分解して、中枢神経に良い影響を与える短鎖脂肪酸(酢酸、酪酸などの低分子の脂肪酸)を産生し、間接的に脳神経の機能に関与します。

このように、人間の体の中では、脳と腸がお互いに影響しあって生命の保持に関わっているのです。

これこそが、腸内細菌叢が“第二の脳”と言われるゆえんなのです。

2019年 9月 10日更新

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Columnist's Profile

吉田小児科院院長Takashi Yoshida(Yoshida Pediatrics 吉田小児医院)

北海道出身。北海道大学卒業。大学院での研修終了後渡米。主に基礎医学の研修に18年間携わる。そのうち2年間はNIH(National Institute of Health)フェローとしてイギリスに留学。ケンブリッジ、オックスフォード大学では基礎生化学の研修を行う。1972年より小児臨床に転向。ノースウェスタンおよびスタンフォード大学で小児レジデンスの研修を終え、1976年より当地で開業、現在に至る。小児臨床では、新生児から18歳まで健康診断および一般小児の病気を対象に診療にあたっている。患者層は日本人のみならず世界各国からの子供も多く、殊にラテン系の子供にはスペイン語で話しかけるのが楽しみ。毎週5日と第1、第3土曜日は半日診療を行っているほか、緊急の場合は必ず当日に受付診療しているので心配はなし。泣いて入ってくる子共が、帰る頃には笑い声を立てているのが第一の楽しみ。また体を鍛える目的で、毎日曜早朝9ホールのゴルフ廻りをしている。その他は読書や囲碁を自分流で楽しみながら続けている。

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