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心のケアと癒しに役立つ臨床心理のここだけのお話

2022年 2月 22日更新

第6回 : 被害者意識の人間関係って?その2

今回は「第5回:被害者意識の人間関係って?その1」でご説明した「被害者」「加害者」「救済者」の三角関係やそこから生まれる共依存を解消する方法や対策についてお話します。

「健康的な」境界線を作る

「被害者」「加害者」「救済者」や共依存を生み出す「被害者意識」から抜け出すためには、自分の考えや気持ち、そして言動の全てに100%責任を持つことです。逆を言えば、相手の考えや気持ち、言動の責任は全てその人にあります。つまり、健康的な人間関係を維持するためには、たとえ家族や恋人、親しい友人であっても、あなたに責任はないという考えが大事なのです。

日頃から被害者意識を感じやすい人は、人間関係において何か問題が起こったら、いったん自分と相手を分けて考えてみるようにしてみましょう。

例1) 夫とけんかになった

私(妻): つい感情的になって夫に文句を言った = これは私の問題。

夫: 妻に文句を言われて黙り込み口を利かなくなってしまった = これは夫の問題。

自分と相手を分けて考えられるようになると、人間関係における認識が変わります。通常、人は対人関係でうまくいかないと相手が変わってくれるように望んでしまいます。相手と話し合って思いを伝えたりお願いしたりすることはよいことですが、それを受け入れるかどうかは相手次第。また、口では分かったといっても行動が伴わないケースもあります。相手がいつか変わってくれると期待しているとそこで止まってしまい良い方向に行くことはありません。それどころか、お互いをさらに傷つけてしまう結果になることもあります。

人間関係においては、たとえ家族であっても「健康的な」境界線を引くことが最も重要なのです。共依存の関係にあった人は、自分と相手を分けて考えるということに抵抗を感じ、時には寂しさや孤独を感じることもあるかもしれません。けれど、自分と他人を分けて考えることができるようになると、次第に自分の考え方や行動を変えてみようと思うようになります。自分がどんな考えを持ち、どんな気持ちなのかを知ることで、100%の責任を取れるようになります。

自分が全てを作っていることに気付く

もし、あなたが大好きな人に欲しかった物をプレゼントされたとき、うれしい、幸せだというポジティブな感情を感じているのはあなたです。同様に不安、悲しみ、怒りなどといったネガティブな感情を感じるのもあなたです。つまりあなたが全て作り出しているのです。もちろん嫌なことをされたらどんな人でもネガティブな気持ちになるのは当然です。しかし最終的にはあなたが全て決めているのです。そして、それに気付くことが「被害者意識」から脱するための重要な一歩となります。

自分の考えや気持ちに向き合う方法

「被害者意識」を抱えている人の中には、自分の本当の感情が分からなくなっている人が少なくありません。自分を深く知るためには以下のような方法があります。もちろん、できなくても自分を責める必要ありません。できそうなことから始めてみましょう。

1. マインドフルネスで自分を観察する

マインドフルネスとは、“今”に意識を集中させることです。今この瞬間、あなたを傷つけているのは誰ですか?家族?恋人?友人?あなたを本当に傷つけているのは誰でしょうか。

2. 心と体のセルフケアをする

自分を大切にするというとなんだか難しく捉えてしまう人が多いのですが、要するにあなたの心と体が喜ぶことをしてあげるだけでよいのです。好きな音楽を聴いたりお風呂に入ったり、どんな小さなことでも構いません。セルフケアは自分を動かす燃料だと思うとよいでしょう。日頃からセルフケアをしていると自分の心を守ることができます。

3. 思っていることを書き出す

思っていることを全て紙に書き出してみましょう。どんな気持ちなのか、どんな行動を取ったのか。頭の中でぐるぐると回っている考えや感情も、紙に書き出すとはっきり分かるようになります。

上記の内容は一般的な情報です。つらいときは、一人で苦しまずに、心理カウンセリングやセラピーを受けてもよいと思います。

2022年 2月 22日更新

皆さんのご意見、ご相談等ございましたら以下までご連絡ください。

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Columnist's Profile

インターナショナル ライフサイクル ファミリーセラピーInternational Lifecycle Family Therapy Inc.

CA州心理士免許(LMFT)と博士号を持つ経験豊かな2人のセラピストによる心理カウンセリングオフィス。多くの方々のより良い心の健康を目指し、個人、カップル、家族の心理セラピー/カウンセリングを日本語および英語で提供している。仁科盛次郎(心理療法士、LMFT#50945)および菱谷有希子(心理療法士、LMFT#53262)はCA州公認のマリッジファミリーセラピストで、専門は家族・カップル間のコミュニケーション、異文化や多文化における問題、思春期における心理やアイデンティティ問題、薬物依存治療など。多種多様な家族療法を取り入れたアプローチや、物の見方を変え解決方法の発見へと導くアプローチ、催眠療法などの潜在意識セラピーを提供。また、両者ともに移民難民、性犯罪にかかわる青少年更生、薬物リハビリテーション施設での経験を持つ。大学院講師としての活動及び後輩育成にも精力的に取り組んでいる。Youtube「カリフォルニアから心の癒しチャンネル」にて心にまつわるビデオ公開中。

International Lifecycle Family Therapy Inc.

1101 South Winchester Blvd. Suite P-296 San Jose, CA 95128

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