コラム

カイロプラクティックは面白い!

2016年 7月 29日更新

第49回 : 顔を触るだけで痛い? それ三叉神経異常かも?

~ 脳神経: 第5番 (CN 5) 三叉神経 (Trigeminal Nerve) ~

(Fig.1) 知覚の分担です。紫が眼神経、ピンクが上顎神経、薄緑が下顎神経です。
画像出典: What is Trigeminal Neuralgia?Trigeminal Neuralgia Association UK

脳幹ポンズ(Pons)の中には、三叉神経の中枢があります。三叉神経は、頭蓋骨を顎関節と耳の穴の近くから抜け、3つに枝分かれして前方に進み、顔に到達して知覚や運動機能をコントロールしています。3つに分かれることからこの名前が付いたようです。

3つの支流は、眼神経(Ophthalmic Nerve, V1)、上顎神経(Maxillary Nerve, V2)、下顎神経(Mandibular Nerve, V3)とそれぞれ呼ばれ、どこに行くかにより、顔の上部分からから順番にV1,V2,V3となります。(Fig.1)

三叉神経とは

(Fig.2) ちょうど図の真ん中あたりから枝分かれしていることが分かると思います。
画像出典: #23 July 2013 Hope: It's not all in your head Stop the Headache

眼神経

眼神経は、枝分かれしてから顔の方向に向かって進んでいき、目の上や眉間辺りから顔部分に出て、頭皮、額、目蓋、角膜、結膜、鼻の粘膜、鼻の皮膚、前頭洞(Frontal Sinus)からの知覚情報を脳に送ります。眼神経は知覚機能のみです。

上顎神経

上顎神経は、枝分かれ部分から顔に向かい、頬骨の下辺りから顔に入り、下目蓋や頬、上唇、上の歯、上の歯茎、鼻の粘膜、副鼻洞(Sinus)、咽頭部からの知覚情報を脳に送ります。上の歯の痛みはこの神経で感じることになります。上顎神経も知覚機能のみで運動機能はありません。さらに涙腺や鼻の分泌器官へ自律神経(副交感神経)を送っています。

下顎神経

下顎神経は、下顎に進み、下唇、下の歯、下の歯茎、顎、頤を除く下顎、耳の穴の一部、口の中の感覚(触覚、痛み、温度感覚)の情報を脳に送ります。下顎神経は、噛むための3つの顎の筋肉を運動機能脳をコントロールしています。(Fig.1)(Fig.2)。そして、耳下腺、舌下線、顎下腺へ副交感神経を送っています。

三叉神経は、反射をコントロールして体を守っています。三叉神経が関与するなかで、特に重要なのが角膜反射(Corneal Reflex)です。角膜反射とは、黒目と白目の境目の角膜を触ると目蓋を急に閉じ、顔を刺激から遠ざけるため反対側へ向きます。この反射により、ごみや異物が目に触れようとしたとき目を保護して、ダメージを最小限にとどめようとするものです。角膜反射は、三叉神経が知覚を顔面神経が目蓋を閉じるという運動機能を分担して行ない、この2つの脳神経をテストするために私たちは利用しています。

三叉神経の異常

(Fig.3) 右上から2番目が三叉神経です。
画像出典: Interior view of the human brain, with cranial nerves labelled Cranial nerves

もし、この神経に異常が出た場合は一体どうなるのでしょうか?三叉神経痛(Trigeminal Neuralgia)またはティック(Tic Douloureux)と呼ばれる顔にひどい痛みを起こす病気になります。三叉神経痛とは、慢性症で、普通ならばなんとも無いような刺激を顔に受けてもひどい痛みを感じてしまう病気です。

症状
  • 強度の放射するような痛み、疼痛、電気ショックのような痛み。
  • 顔を触ったり、食べ物を噛んだり、話をするときに口を動かしたりすることで顔の痛みが出る。
  • 大抵痛みは数秒から数分継続する。このような痛みのパターンが数日から数か月続く。
  • さらに軽い痛みが日常的に起こる場合もあるが、多くは発作の間はまったく痛みがなくなる。
  • 痛みの部分が段々と広がる。
  • ほとんどが、痛みは顔の片側のみに起こる。
  • 痛みの部分が一点から始まり、そこから広がっていく。多くは顔の中心部、鼻、頬、唇などから始まる場合が多い。
  • 痛みの強度が、病気に進展により増す。
  • 飲食が痛みを起こすので、痛みを避けるため飲食を控えすぎ、脱水症や栄養不良になる。
原因
  • 三叉神経が脳幹から抜け出す辺りにある静脈や動脈が、三叉神経に近づくとき血管によって神経が圧迫され症状を生じる。
  • 高年齢。
  • 他の神経障害による原因。
痛みを起こす引き金となること
  • ひげそり
  • 顔を触る
  • 飲食
  • 歯磨き
  • 話をする
  • 化粧
  • 顔に風が当たる
  • 笑う
  • 洗顔

日常生活において普通に行なう動作で激しい顔の痛みを起こしてしまいます。

上顎神経と下顎神経は、歯の痛みを伝える神経でもあり、歯痛はこの神経で脳に伝達されます。一方、下顎神経は、顎を開け閉めするための筋肉をコントロールしています。これは片方ずつのコントロールではなく、両側をコントロールしているため、障害で顎が全く動かなくなることはあまりありません。片方の筋肉が色々な原因により弱くなってしまった時、顎が弱くなった筋肉の方向にずれてしまうという現象が起きることがあります。

三叉神経痛(Trigeminal Neuralgia)の特徴
  • 男女比1:2で女性が多い。
  • 年令は大体50才以上が多い。
  • 起こるのは顔の片側のみで、特徴的なトリガーゾーンがある。
  • 痛みを感じる部分は、三叉神経のコントロールする部分のみで、首などに痛みを波及しない。
  • 痛みの発作は大体数秒から数分続く。
  • 痛みの度合いは非常に強く、刺すような痛みから、電気ショックのような痛みを感じる。
カイロプラクティック治療の効果

歯の痛みも、顔の痛みも、そして顎関節症も三叉神経が関係しています。この神経に問題が出ると日常生活に大きな支障が出ます。顎関節症や、噛む筋肉の障害には歯軋りなどが関係してくることがあり、これはカイロプラクティクの治療が効果を発揮します。

2016年 7月 29日更新

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Columnist's Profile

Chiropractic Functional Neurologist
Hiro Sugawara D.C.Hiro Sugawara, D.C.

空手や棒術などの武道に打ち込む中、少林寺拳法の整体に興味を持ち、それがきっかけになりカイロプラクティックを知り渡米。1990年に Palmer - Westカイロプラクティック大学を卒業、学位を取得、92年 Sunnyvale に開業現在に至る。94年には、公認スポーツカイロプラクター資格を取得、95年より2000年母校 Palmer - West大学にて講師を務める。98年より Chiropractic Neurology の勉強を始め神経科カイロプラクティックの知識を深め、さらに、平衡感覚リハビリテーション講座、交通事故のスペシャリストとしての Auto Safety Trainer講座、機能神経科としての Developmental Disorder Specialty (発達障害児講座) 等数々の講座を終了。現在も Mountain View のシニアセンターやPHP (Parent Help Parent) にてセミナーを行いながら更なるカイロプラクティックの知識と技術向上に努めています。

Hiro Sugawara, D.C.

990 W Fremont Ave Ste M, Sunnyvale CA 94087

“Hiro Sugawara, D.C.”について詳しくはこちら。

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