小児科臨床の四季

小児医業は、四季を通じ色々な病気に立ち会う。春は花粉によるアレルギー、そして秋から初冬にはインフルエンザ。子供達の病気を看るのは大変だが、それなりの楽しみがある。お母さま達の心の休みとなれば幸い。

2018年11月 1日更新

第7回 : 風邪薬の代わりにハチミツを

最近、その筋より、小児用風邪薬の使用について重大な指示がありました。それは近年になって風邪薬の成分としてずっと使われていたフェニレフリン(Phenylephrine)やデキストロメトルファン(Dextromethorphan)は、風邪の症状である鼻水や咳に対して、ほとんど効き目が無いばかりでなく、時にはむしろ有害であるという報告に基づいて、FDA(アメリカ食品医薬品局)やアメリカ小児科学会が、これらの風邪薬(Dimetapp DM、Triarminic、Pediacareなど)を6歳以下、特に2歳以下の幼小児には与えないようにとの指示を出したのです。

これを機に、昔からよく言われていたハチミツ(Honey)の風邪や感染に対する効用が、再び脚光を浴びています。ハチミツが医薬品として民間に使われて来た歴史は古く、遠くは2370年ほど前に、アリストテレスが目や傷の治療に役立つという記述があります。その後も、聖書やコーランなどにも、その薬効が記述されています。ハチミツの効用は、広い範囲にわたって知られています。それは抗菌、抗炎症作用、傷口の回復促進、組織再生促進などですが、その効き目は産地によって必ずしも一定ではなく、マヌカという木から採れるニュージランド産のマヌカハニー(MANUKA Honey)が、一番殺菌作用があると報告されているのです。

さて、なぜハチミツが風邪に効くのでしょうか。現在のところ確実な作用機序はまだはっきりしていないのですが、ハチミツにはアンチオキシダント(抗酸化)の効果があることが分かっています。それが咽喉部の局所組織再生に効く、あるいは呼吸器最上部の繊毛の働きを助けて病原物質を外に排出する機能を上げることで、咳が出るのを少なくすると考えられます。また、ハチミツの中の高度の糖分(40%グルコース)が脳に働いて、オピオイドの生体内生産を起こして鎮咳作用を促すなどと考えられています。最近、ペンシルバニア医科大学の研究発表によると、いろいろな臨床実験の結果、実際にハチミツを風邪を引いた子供に就寝前に与えると、ほかの市販の風邪薬、ことにデキストロメトルファンよりもずっと咳止めの効果があったとされていますが、統計的に有意義な結論を出すにはいたっておらず、もっと多くの報告が期待されています。いずれにしても、小児に対する市販の風邪薬の使用が勧められていない現在、ハチミツを与えてみるのも一策でしょう。

ハチミツの与え方は、できればそのまま与えるのがより効果的ですが、飲みづらい時にはハチミツレモンティーとして与えるのも良いです。マヌカハニーの効果は、ハチミツを熱い湯で溶かしても良いとされていますが、ほかのハチミツでは、熱湯で溶かすと少し殺菌効果が下がります。しかし、いわゆる風邪薬としての効果は、どのハチミツでも余り差がないのです。

最後に、ハチミツは1才以下の乳幼児には与えないこと。それは生のハチミツの中にボツリヌス菌の入っていることがあり、これを飲むと乳幼児では神経麻痺を起こす危険があるためですのでご注意ください。

2018年11月 1日更新

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Columnist's Profile

吉田小児科院院長Takashi Yoshida(Yoshida Pediatrics 吉田小児医院)

北海道出身。北海道大学卒業。大学院での研修終了後渡米。主に基礎医学の研修に18年間携わる。そのうち2年間はNIH(National Institute of Health)フェローとしてイギリスに留学。ケンブリッジ、オックスフォード大学では基礎生化学の研修を行う。1972年より小児臨床に転向。ノースウェスタンおよびスタンフォード大学で小児レジデンスの研修を終え、1976年より当地で開業、現在に至る。小児臨床では、新生児から18歳まで健康診断および一般小児の病気を対象に診療にあたっている。患者層は日本人のみならず世界各国からの子供も多く、殊にラテン系の子供にはスペイン語で話しかけるのが楽しみ。毎週5日と第1、第3土曜日は半日診療を行っているほか、緊急の場合は必ず当日に受付診療しているので心配はなし。泣いて入ってくる子共が、帰る頃には笑い声を立てているのが第一の楽しみ。また体を鍛える目的で、毎日曜早朝9ホールのゴルフ廻りをしている。その他は読書や囲碁を自分流で楽しみながら続けている。朝のテレビドラマ『マッサン』がお気に入りで、殊に北海道の余市でのウイスキー造りの話が昔懐かしくて楽しみ。

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